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特集展示にあたって

特集展示にあたって

この度、大川美術館では、特集展示としてグラフィックデザイナー亀倉雄策(1915-1997)のポスターを展示いたします。
当美術館では、現在、亀倉デザインのポスターを195点所蔵しています。このコレクションは、亀倉と交友のあった桐生のテキスタイル・プランナー新井淳一(1932-2017)が所有していたもので、平成10(1998)年度に当美術館の所蔵となりました。
1964(昭和39)年10月に東京で開催されたオリンピックのポスターは、当時とても人気があり、一躍デザイナー亀倉雄策の名前はひろく知れわたるようになりました。そうしたところから、当初この特集展示は、今年7月開催予定でした東京オリンピックを応援する意図から企画いたしました。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大にともなうオリンピックの延期、さらに国内外における未曾有の感染拡大と政府による「緊急事態宣言」を受けて臨時休館することになり、開催を延期しました。
 さて新型コロナウイルス感染症の影響により、日本を含む世界の風景は一変してしまった観があります。感染の脅威のなかでの「自粛」と経済的な打撃をうけて、今、わたしたちは、かつての「日常」をとりもどうせるのかどうか、あるいはこれからどういう「世界」になるのだろうかという不安をいだかざるをえません。
一方、今回展示する亀倉のポスターは、1950年代から90年代にかけてのさまざまなイベントや企業のイメージを宣伝し、広報する目的で制作されたものです。いうまでもなくポスターのもっとも大切な機能は、街を行き交う人々の視線を集め、情報とイメージを一瞬にして、しかも明快に伝えることです。そして亀倉が活躍した時代は、まさに日本の戦後から高度経済成長期の時代にあたります。今、亀倉のポスターの数々を振りかえってみると、そうした時代の熱いうねりを伝えるように、そこに息づくのはつねに明日への希望とエネルギーではなかったかとおもいます。したがって、今回の特集展示は、「コロナ」以後のわたしたちが生きる時代が大きく変わろうとしている今だからこそ、単にひとりの優れたグラフィックデザイナーの回顧にとどまらず、一枚一枚のポスターに込められた情熱とアイデアの粋をご覧いただきながら、「希望」を体感していただけたらとおもいます。
 もうひとつ、今回の特集展示にはねらいがあります。それは、展示のための調査で明らかになった亀倉雄策と桐生のかかわりです。1995(平成7)年6月に、亀倉雄策は、当時の桐生産業デザイン振興会の招きで桐生を訪れ、講演をしました。この時に、亀倉は桐生市に自ら収集した世界各地の布24点を寄贈しました。またこの来桐の折には、当美術館にも来館され、初代館長大川栄二と懇談して記念に色紙を書きのこしました。そこで、亀倉寄贈の布もあわせて特別展示することにいたしました。
最後になりますが、この展示にご協力をいただきました桐生市、公益財団法人桐生地域地場産業振興センター、ならびに関係各位に、ここに記して感謝の意を表します。
                                            
2020年6月
大川美術館長
  田中 淳
                                    


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